多入力振動試験装置

軌道空間都市 -トラポリス-
我が国の都市は、世界に名だたる木造都市である。しかも、災害に対するもろさ,土地の平面的な利用,市域をいたずらに広げる開発,狭小住宅の密集による環境の悪化など多くの欠点をかかえている。そのため、我が国の都市再開発計画は、常に不燃化,防災化,土地の立体的利用化を主眼としてきた。
土地の上部方向への利用とは、従来の一機能一敷地による配分から、より有機的に積層利用しようとする考え方である。これは、敷地を高い建物で多目的に利用することばかりでなく、従来全くかえりみられなかった軌道敷,交通路,河川などの上空を有効に利用することも含まれている。
軌道空間都市(トラポリス)は、そのような都市再開発の総合的見地にたって日本大学理工学部理工学研究所が提唱した構想である。"トラポリス"(TRAPOLIS)は、Transportation Polis の略であり、定義づけるなら「電車の走行する軌道空間を内包し、その軌道敷の上部空間を多目的利用(住宅,事務所,店舗,公園,各種公共施設など)に開放,提供した都市装置体」である。また、広義には「鉄道軌道上をはじめ、操作場,一般道路,高速道路さらには航路など広く交通路上部空間を高度利用する施設群」である。
主要研究テーマ
制震装置の性能検証
耐震強度確認評価
免震装置の振動実験
軽量構造物および木造住宅の免・制震化に関する研究
低域振動数の振動計測に関する研究
プレストレストコンクリート梁のせん断性状
木質パネルのせん断耐力と変形性能に関する研究
耐震安全性と多入力振動試験装置
トラポリス構造物を考えるとき、もっとも留意しなければならない点は、軌道上にどの程度輸送のための空間を残しておくかということである。現在、電車が走っていても将来の長きにわたって電車が走ってるとは限らないからである。
例えば、リニアモーターカーのように線路を必要としない乗り物が走るかも知れないし、あるいは高速道路になる可能性もあり、さらには空中遊園地というようなものまで考えられる。かなり遠い将来の社会的変化,要望に対応できる息の長い構造物とするためには、大きな空間を確保しておくことが必要となる。
在来の建築技術でもトラポリス構造物の構築は可能であるが、地震国日本にあってはこのような大空間を内包する構造物には、耐震安全性において未知の部分が残されている。なぜならば、そのような大空間を構成するためには、それら構造物の支柱間の間隔は30m、あるいは60mと大きく離れてしまうからである。
地震は波であり、それが伝わる速度は1秒間に300mあるいは500mである。トラポリス構造物を支える柱が60m離れていれば0.1秒あるいは0.2秒ほどの時間差になるわけである。昭和43年(1968年)の十勝沖地震の際、八戸港湾で観測した波形によると、震度は5,地震波形の加速度としては230gal,地盤としては約15cmも揺れたことが記録されている。この波形の場合、これと全く逆転した波がトラポリス構造物の離れた支柱のそれぞれに入ると、合計30cmもの差ができ、人間でいえば股が裂けたような状態になってしまうのである。波の伝わり方が0.1~0.2秒程度の違いであるとこのような大きな差にはならないが、ともかくトラポリス構造物は、股裂きの状態にも耐えられるようにしなければならない。
こうした設計を可能にするためには、主として二つの研究を行う必要ある。その一つは、トラポリス構造物にどのような地震波が入力され得るのかを予見すること。もう一つは、各支柱に異なる地震入力があっても耐震安全性を高い精度で確認する方法を確立することである。
多入力振動試験装置は、後者の問題の解決に供するため製作されたもので、水平2軸振動台1基,水平1軸振動台2基から構成されており、各振動台を個々に異なる波形で揺らすことが可能である。振動台を3基にしたのは、トラポリス構成物の股裂き状態の組み合わせが多様にできるよう配慮したためである。2基の1軸振動台を平行状態で振動させることにより、支柱間の平行のずれの状態を再現でき、1基を移動させて2基とも一直線上に並べることにより、伸縮的なずれも再現できる。さらに3基の振動台の組み合わせで、人工地盤を支える3本の柱に順次地震波が入力していく状態を現出するなどが可能となる。




多入力振動試験装置
[ 性能 ]
多入力振動試験装置で留意すべき点は、それぞれの振動台から伸びた支柱(構造モデル)がその上部でかなり固く連結されているため、一方の振動の大きさが他の振動台に伝わり、当初の入力波形が乱され、予定された地震波形が再現できなくなることである。しかし、近年のコンピュータの発展に伴う技術の進歩は、波形制御を可能にし、本装置ではこうした弊害も除去されている。まさに新しいタイプの試験装置であり、トラポリス構造物の振動特性開明のためになくてはならないものである。
[ 製作 ]
株式会社島津製作所
(本装置は、モータボート競走公益資金による㈶日本船舶振興会の補助金の受付を受けて製作したものである)
多入力振動試験装置の主要仕様
| 水平一軸振動台(2台) | 水平二軸振動台 | |
| 振動テーブル | 2.5m(加振方向) × 1.5m | 2.5m × 2.5m |
| 加振力 | 75kN |
X軸 100kN Y軸 150kN |
| 許容転倒モーメント |
加振方向 70kN-m 直角方向 20kN-m |
X軸 70kN-m Y軸 70kN-m |
| 許容回転モーメント | 50kN-m | |
| 最大変位 | ±200mm | |
| 最大加速度 | 1.2G(3ton積載時),1.0G(5ton積載時) | |
| 加速と接続時間 | 平均速度 35cm/sec(正弦波加振時) | |
| 使用周波数範囲 | 0.01Hz~50Hz | |
| 最大積載重量 | 5ton | |
| テーブルの支持方式 | 静圧軸受方式 | |
| 入力波形 | 正弦波,任意不規則波(実地振動数,人口地震波,ランダム波) | |
